なぜこんなにも時間がないのだろうか―――
節約していたはずなのにどうしてお金がないのうだろうか―――
私たちは時間もお金もないように感じることが度々あるはずです。
「ない」と感じる正体はズバリ「欠乏」です。
いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学 (ハヤカワ文庫NF) [ センディル・ムッライナタン ]では欠乏を行動経済学の観点から私たちはなぜ足りないと感じてるかを読み解いていきます。
欠乏への対策は忍耐ではどうにもならないということを認識すること。
お金や時間が足りないと感じる不安という欠乏は様々な心理的効果を引き起こします。
欠乏から逃れるにはスラックという事前準備をする必要があります。
欠乏とはなにか
与えられたお金や時間が少ないと人は欠乏し、私たちの心を占拠してしまいます。
私たちは欠乏を経験すると、それが重要であるか否かに関わらず心奪われてしまいます。
奪われた心は私たちの意思とは関係なく満たされてないと感じる事柄へと向いてしまいます。
貧乏な人ほどお金に執着があったり、空腹時に食事のことしか目に入らなかったりするのもこの欠乏が原因です。
反対に集中することを良しとする内容であれば、欠乏によりその事柄にのみ一点集中ができるという有効な効果をもたらす可能性があります。
トンネリング
1つのことに集中するということは、他のことをほったらかしているということです。
スマホやパソコンに夢中になりすぎることでパートナーや友人からの問いかけに気づかなかった経験があなたにもあるはずです―――
欠乏は圧倒的な「集中」を生むと同時に「トンネリング」を引き起こします。
私たちは欠乏のおかげで集中することができますが、その事柄が最も重要でなかった場合、
トンネルの外側(他の事柄)に押し出されてしまい、重要ではないことに集中したがために本来重要である事柄がほったらかしされた状況に陥ってしまいます。
このトンネリングをうまく活用することができれば、欠乏を自らの手中に収めることができます。
欠乏の利用
著者は欠乏の概念を広げるべきであると主張しています。
なぜなら、認知能力も欠乏によって変化するという結果も出ているからです。
私たちは自分の持っているモノ(時間や良心などかたちのないものも含みます)がごくわずかしかない時に限って欠乏の物理的な意味に重点を置いてしまいがちだからです。
時間が足りない――― お金が少ない―――
そう考えることよりもっと重要な不足があると考えるべきであり、それらに気付くことができれば自分が本当に重要視していることに集中の力の恩恵を受けることができます。
借金が借金を生む
貧しい人が借金をする理由は貧困であるからというのが結論です。
何を普通のことを言っているだ!と罵声を浴びそうなので理由を付け加えます。
お金に困っている人たちは短期的な解決策として継ぎはぎでその場を乗り切ろうとします。
お金が足りないから安いものを買うという選択肢は今この一瞬のお金を節約する応急処置になりますが、長期的には買い直しや安いことが理由(すぐ壊れる)でせいで他にも出費が増える可能性が高いといえます。
とはいえお金を借りることや安い継ぎはぎが必ずしも悪い選択した道だとは限りません。
本当に将来的に十分な見込みがあり、余裕があるのであれば先送りにする事は賢明な場合があることも忘れないでください。
時間の借金
借金と聞くとお金のイメージが強いですが、時間に対しても同じことがいえます。
欠乏による処理能力の負荷がもたらす最も悪質長期的な弊害は睡眠時間の低下です。
欠乏について考えることがいっぱいになり、まず睡眠時間が奪われます。
奪われた睡眠時間が原因で脳は十分に回復することができず処理能力が低下し、さらに効率が悪い処理で睡眠時間が減るという負のスパイラルに陥ります。
これは「睡眠負債」とも呼ばれます。
一晩に4〜6時間の睡眠が2週間続くと徹夜を2日続けた状態の脳に匹敵する処理能力となってしまうといわれています。
あなたの睡眠時間を計算して睡眠負債になっていないでしょうか?
睡眠時間を確保することで欠乏から逃れられるかもしれません。
スラック
スラックはとは緩みやたるみの意味合いで用いられます。
本書でのスラックとは意図的に使わずに残したお金や時間ではなく、豊かな環境でもたらされる副産物を指します。
生活に困らないと安心できるだけの余裕がある状態で買う車のオプションをワンランク上のものにするか否かはスラックと呼べます。
しかし何ふり構わず買う車のオプションのグレードの選択肢はスラックとはいえません。
スラックのある選択であれば例えオーバースペックでも寛大な気持ちでいられますが、スラックがなければ後悔に苛まれることでしょう。
スラックの有無で選択の間違いを気にしないことや許容出来る範囲も広がります。
それらは豊かさを感じられる心の贅沢といっても過言ではありません。
実は余白が必要
やることがたくさんあると、効率良くスケジュールを詰め込みたくなりますよね?!
むしろ詰め込まなけれならないという使命感に駆られますが、詰め込む衝動に負けてはいけません。
前章で紹介した「スラック」という余白が私たちには必要なのです。
むやみにやることを詰め込むとギリギリの状態となり、少しでも予定が崩れるとスラックがない状態では、またもや睡眠時間を犠牲にしてしまい、お決まりの時間がないという欠乏に陥っているということ。
私たちは遅刻しないように一本早い電車に乗って余裕を持った行動をします。
私たちがする貯金も食料の備蓄もある意味スラックといえるかもしれません。
効率を追求することが悪いとはいいませんが、仕事にもスラックという余白を設けるべきではないでしょうか?
先手必勝
将来状況がもっと楽になったときにスラックを持って欠乏に備えようと判断を下す事を計画しても、
その計画は今の欠乏によって判断を下せない可能性が高いです。
ならばどうしたらいいか―――
先手を打ってスラックを作り出し、欠乏は本当に集中するべきところでその特性を発揮させるのが賢明です。
まとめ
時間もお金もその他に対しても緩衝となるスラックは裕福なときにしか築くことが出来ないようです。
欠乏の力は人を引きずり込む力が強いですが、理論を理解することで対処方法や欠乏そのものを利用することも可能です。
RPGゲームの強キャラを倒し仲間にしてしまえば、これほど心強いことはありません。
時間やお金の欠乏という強敵を下部にして活用したい方に手に取って頂きたい一冊です。
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