人は誰しも何かを変えたいと思っています―――
変えたいのは自分自身や環境、友人や取引相手だったり様々です。
THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術 [ ジョーナ・バーガー ]では相手を変化させる(つまりは説得)ことにフォーカスを当てて、人を説得する方法が紹介されています。
説得と聞くと交渉人やネゴシエーターを想像して、特殊なスキルが必要だと考えていませんか?
そんなことはありません。心を動かすヒントは化学反応にあります。
人を説得するには自らが触媒(カタリスト)の役割を担うこと。
相手が自分で自分を説得する状況を作り出すことが出来れば一瞬で相手の心を変えることができる
触媒(カタリスト)として振る舞う
「触媒(カタリスト)」という言葉を知っているでしょうか。
変化を妨げる障壁を取り除く働きをする物質です。
人の心を動かすという変化を起こしたいのであれば、自らが触媒(カタリスト)になって障害物を取り除くことです。
行動するまでのハードルを下げることが出来れば、人々の行動促すことが出来るようです。
説得の心得
ここでは相手を説得するための心得を4つ紹介します。
①メニューを提供する
→「誘導型の選択」とも呼ばれます。
何でも自由に選ばせるのではなく、こちらが決めた選択肢の中から自由に選んでもらう方法です。
②命令ではなく質問をする
→相手が自分の答えに責任を持つような質問をします。
例えばタバコは体に良いか悪いかという質問をすれば「悪い」と言わざるを得ません。
「タバコは体によくない!」と断定されるよりその答えに責任を持つことになるというわけです。
③ギャップを明確にする
→人間は首尾一貫していることを求める習性を利用します。
自分でしていることの矛盾を明確に気づかせることも効果的です。
④理解からはじめる
→一言でいえば「信頼関係」です。
あなたを理解しているという相手へ戦略的共感を用いることが古典的ですが効果的です。
心理的リアクタンス
人間は選択肢や行動を制限されることを嫌います。
あなたもなにかをするように相手に命令や指示されたりした場合に思い当たる節があるはずです。
本書では未成年の喫煙対策を例に挙げ、数多くの子供たちの行動を促しました。
何かを禁止されると、かえってそれがやりたくなる経験…ありますよね?
例えば、鶴の恩返しを思い出してください。
「絶対に覗いてはいけない!」といわれている中で、覗いてしまいおじいさんのものとから去ってしまいます。
人は誰しも自分で選びたいと思っているため、禁止をせず主導権を相手に渡した状況を作り出すことに注意を払います。
さらに主導権が相手であれば、その答えに責任を持たざる得なくなる点もより効果的になります。
つまり、相手が自分で自分を説得するように相手に取り繕えばよいということです。
許容ゾーンと拒絶領域
説得は許容ゾーンでしか成り立ちません。
万が一拒絶領域の中にある情報であれば確実に説得は失敗します。
理由は簡単で人は自分とかけ離れた考えには反対するためです。
本書ではアメフトのフィールドに見立てて解説されています。
許容ゾーンと拒絶領域がせめぎ合っているポイント(どちらにもなりうる)を見定めて距離を縮め、
小さなお願いを聞き入れてもらい、許容ゾーンを広げていくことで説得の確率が上がります。
お互いに歩み寄れる話題を探すつもり同意できる話題を「現状打破のポイント」と呼んでいます。
不確実性
現状を維持したいのであれば不確実性は大いに役立ちます。
しかし、変化を求めるようであれば確実性不確実性ほど厄介なものはありません。
不確実性を取り除くことができれば人々に行動を起こしやすくさせることができるというわけです。
例えば無料で配られている試供品は確実に商品を買わせるための布石といえます。
本当に必要ないものでなければあれば、この前もらったその試供品はそっとゴミ箱に捨てておきましょう。
知らぬ間に購買意欲の心を変えられているかもしれません。
補強証拠
相手が自分と似ているほど相手が提供する補強証拠が説得力を持ちます。
人間は都合の良い生き物で、自らにとって気に入らない情報がフィルターにかけ、自分の考えを裏付けるような情報だけを信じる傾向があります。
Twitterや他のSNSでも同じ考えを持つ人々が集団となるため、補強効果により一層強い影響力となるというわけです。
まとめ
誰かになにかを制限されると、頭の中にその制限が残り続けます。
心理的リアクタンス自体を取り除くことはできませんが、心理を理解しているか否かで将来の状況を大きく変えることはできるはずです。
ただ知識もなく「人の心を動かそう!」と考えるだけでは何も変わりません。
人の心を掴み思うように動かしたい方に手に取って頂きたい一冊です。
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