要約|生物はなぜ死ぬのか【死がもたらす重要な役割】

思考・考慮

私たち人間に限らず生物はなぜ死ぬのでしょうか?

生きているということはいずれ死ぬということです。

決してネガティブなことではない「死」について考えてみませんか?

私たちが最終的死んでしまう理由を生物はなぜ死ぬのか (講談社現代新書) [ 小林 武彦 ]より掘り下げていきましょう。

私たち生物が死ななければいけない大きな理由は「多様性」の維持といえます。
選択と進化を繰り返しよりよい多様性のために「死」は必要なことのようです。

生物の始まり

どうして地球で生物が誕生したのかは今でも分かっていないようです。
なぜなら生命誕生の瞬間を実際に見た人もいなければ、再現実験で人工的に生物を作ることにも現時点でまだ成功していないためです。

あなたはハビタブルゾーン(生存可能領域)をご存知でしょうか。
これは太陽との程よい距離を指す専門用語で、水や生物の材料となる有機物が凍る温度までいかず燃えるほど熱すぎない温度です。
地球がたまたまこのハビタブルゾーンに存在したことが大きな要因のひとつと考えれています。

真核細胞の出現

原核生物」と呼ばれる核やミトコンドリアなどの細胞内小器官を持たない細菌が何種類かが融合して「真核細胞」が生まれます。
そこからさらに真核細胞同士で融合し多細胞化となり、気の遠くなる長い年月をかけて進んだ結果、弱い細胞は淘汰され、優れた多細胞だけが質の高いものとして生かされていきました。

時系列的に考えると生命の誕生から28億年後、つまり今から10億年前に多細胞生物が誕生したといわれており、現代の私たちや動物、昆虫などのかたちになるまで38億年という恐ろしい時間の経過の上に私たちが成り立っています。

生物の死に方

生き物の死に方には大きく分けて2つあります。
1つは他の生物に食べられたり、病気や飢餓で死んでしまう「アクシデント」による死です。
もう1つの死に方は「寿命」によるもので、遺伝的にプログラミングされており、生物の種によってその長さが異なります。

小型の生物は食べられたりするアクシデントによる死、大型の生物では寿命による死が一般的だとされています。

ある程度食べられても子孫が残るぐらいの子供が産める生物が生き残っているとも考察することができます。

これらは生き残るために淘汰されてきた死に方ともいえるかもしれません。

生きることとは?

生物の種類によって異なる死に方があるように小型の生物は「食べられないことが生きること」であり、大型の生物は自分の体を維持するために「食べることが生きること」ということになるようです。

長い長い時間をかけて細胞が多様化をしていきた中で死に方だけでなく、生き方もまた多様化し進化してきたといえるのではないでしょうか。

細胞の入れ替わり

私たちに限らず生物の体が完成すると後はひたすら細胞と新しい細胞の入れ替えを繰り返します。
入れ替えの周期は細胞によって異なるようです。

・腸管内部の上皮細胞 →  数日
・皮膚  →  4週間程度
・血液  →  4ヶ月程度
・骨の細胞 →  4年程度

人間を例に挙げると一番入れ替わりが早いもので数日、一番長い細胞で4年程度だそうです。

ここで面白いのが、例外的に入れ替えをしない組織もあるということ―――それは心筋神経細胞です。

心臓を動かす心筋細胞が生まれてから大きくなることはあっても数が増えることはなく、脳や脊髄を中枢とした全身に信号を送る神経細胞は幼少期が1番多くその後は基本的に減っていくものだそうです。

確かに神経細胞が入れ替わったら記憶の維持ができなくなる恐ろしい事態になりますね。笑

細胞の老化

細胞は入れ替わりには上限があるため、入れ替わるたびに私たちの身体は老化していきます。
一見「なんて余計な機能…」と思いますが、老化も大切な役割を果たしています。

細胞が分裂を繰り返すとゲノムに変異が蓄積し、細胞ががん化するリスクが上がります
このリスクを避けるために免疫機構や老化の仕組みを獲得して細胞の入れ替えが可能になったと推察されています。

むしろ老化は私たちを助けているのかもしれません。

現代においても廊下のメカニズムを全て解明されてはいませんが、老化もまた長い歴史の中で生きるために獲得してきた進化のかたちです。

まとめ

生き物にとって死とは進化であり、変化と選択を実現するために避けては通れないものです。
死ぬことで生物が誕生し進化し、再び生命を繋いでいくことができます。
つまり「死」は生命の連続性を維持する原動力だというのが著者の結論です。

死ぬは確かに恐怖であることに変わりありませんが、私たちの生もまた多くの死の上に成り立っていると考えれば、死も未来のための必然といえるのかもしれません。
死への恐怖しかない考えを変えたい方に手に取っていただきたい一冊です。

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